東村山・所沢・小平 出張買取の現場から

家じまいや骨董品の買取の日々を綴るブログです

「破調の美」という革命――桃山織部の話

先日、業者市で面白いものを入手しました。

鳴海織部の角向付け。桃山末〜江戸初期のものです。
緑釉・白釉・鉄絵の三色構成、内側に梅花を大らかに描いた鉄絵文。貫入がびっしりと入り、土肌には400年の時間が染み込んでいます。

手に取ると、妙な説得力があります。
歪んでいる。左右非対称。整っていない。
なのに、どこかゆるぎない。
これが織部です。

鳴海織部 向付 桃山時代

 


千利休の次に来た男――古田織部と「破調の美」

織部焼は、千利休の弟子であった武将茶人・古田織部(1543〜1615年)の指導のもと、美濃窯(現・岐阜県)で生み出されました。

利休の茶は「静謐」でした。侘び、寂び、引き算の美学。
古田織部はその弟子でありながら、まったく違う方向へ進みました。
歪み、変形、大胆な文様、鮮やかな緑釉——従来の端正な美しさとは対照的な、「破調の美」を体現する器を作らせたのです。

歪めることが美しい。非対称が正しい。当時としては相当な異端でした。

慶長年間(1596〜1615年)に最盛期を迎えた織部焼でしたが、古田織部が豊臣方への内通を疑われ1615年に切腹したことを機に急速に衰退。寛永年間(1624〜1645年)にはほぼ姿を消しました。
わずか数十年の命でした。だからこそ、桃山の織部は希少です。


織部焼の種類

織部焼にはいくつかの様式があります。代表的なものをご紹介します。

青織部

器の一部に緑釉(織部釉)をかけ、残りに白釉と鉄絵を施したもの。織部焼の最もスタンダードな様式で、非対称の絵付けが特徴的です。

鳴海織部

白土と赤土を張り合わせた素地に、緑釉・白釉・鉄絵を組み合わせたもの。今回入手した向付がこれにあたります。白・赤・青・鉄茶の四色が一枚の器に共存する、織部焼のなかで最も複雑な意匠構成です。

黒織部

全面に黒釉をかけたもの。茶碗に多く、力強く男性的な印象があります。鉄釉で描かれた絵文が黒の中に浮かび上がる意匠が特徴です。

志野織部

志野焼の白い肌に織部釉の緑を組み合わせたもの。志野の柔らかさと織部の鮮やかさが合わさった様式です。


実用としての織部――料理が映える器

ぱっと見では「突飛な器」と思われるかもしれません。
ところが、実際に料理を盛ってみると、これが案外よく似合う。

緑と白と赤茶が交わる複雑な色彩は、料理の色を引き立てます。
歪んだ形は、盛りつけに「余白」を生む。整った円形の器と違い、どこに何を置いても様になります。
大らかな鉄絵の文様は、料理の邪魔をしない。主張しすぎず、しかし存在感がある。

織部焼が茶懐石の向付や料理鉢として重用されたのは、単なる流行ではありませんでした。
「料理を盛る」という実用の場で、この器は本当によく機能するのです。

現代の食卓に織部を一枚置いても、おそらく浮きません。400年前の器が今も通用するのは、それだけ普遍的な完成度があるということだと思います。


案外、蔵や押し入れに眠っています

お茶をされていたご家庭、骨董好きのお父様やご主人がいらしたご家庭には、こういった器が眠っていることがあります。

織部は見た目が独特なため、「古い変な皿」として雑然と棚に置かれていることも珍しくありません。

こんな器に心当たりはありませんか。

  • 緑色の釉薬がかかっている
  • 歪んでいたり、角張った変わった形をしている
  • 内側に花や草、虫などの簡単な絵が描いてある
  • 白と緑が半分ずつかかっている

ただし、ひとつ知っておいていただきたいことがあります。
現代にも織部焼を作る陶芸家は多く、市場には現代作家の作品が大量に流通しています。
緑釉の器=古い織部、とはなりません。買取の観点で価値があるのは、あくまで桃山〜江戸初期に焼かれた「古織部」です。

古織部と現代ものの見分けは、貫入の入り方・土の質感・釉薬の発色・高台の仕上げなど、複数の要素を総合的に判断する必要があります。「これはどちらだろう?」と思ったら、ご自身で判断せず、まず見せてください。

時代物かどうか、箱や落款も含めて確認します。
まずはお電話ください。出張無料でご自宅へ伺います。


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